令和5年 第4回市原市議会定例会 代表質問 小沢みか

1.持続可能な医療体制の構築について

(1)市原保健医療圏における諸課題について

*地域医療構想とは 


2014年(平成26)6月に成立した「医療介護総合確保推進法」によって、「地域医療構想」が制度化されました。

二次保健医療圏ごとに将来必要となる病床数を、高度急性期・急性期・回復期・慢性期の4つの機能ごとに推計し、各病床機能の役割分担と連携を進めることで、持続可能な医療提供体制を実現する取組みです。

今後の医療需要の変化に持ちこたえるためには、限られた医療資源を効率的に配分する必要があります。これまでのように各医療機関の自主選択に任せては立ちゆかなくなりますから、協議を通じてその地域にふさわしいバランスを考えなければなりません。

千葉県も2016年(平成28)に構想を策定し、そのための協議の場として二次保健医療圏ごとに「地域保健医療連携・地域医療構想調整会議」が設置されています。

*現状認識について

千葉県の地域保健医療計画によりますと、市原では病床総数は報告上充足していますが、機能別に偏りが見られます。先ほど述べた4類型のうち、急性期以外の高度急性期・回復期・慢性期が不足している状況です。

また、外来医師偏在指標(人口10万人あたりの診療所医師数)は全国335医療圏中328位、県内9医療圏中9位。

さらに訪問診療実施医療機関数等が千葉県平均と比べ少ない、つまり在宅診療のリソースに乏しい。これは先日の県議会でも県が認めていましdた。

同計画は今年度で終了し、現在令和6年度から5年間の次期計画を策定中で、素案が示されている段階です。

その素案では千葉県循環器病センターについてこのような記述があります。

「市原保健医療圏及び 隣接圏内に複数の救命救急センターが指定されていることなどを踏まえ、将来的な専門医療と地域医療のあり方について、全県的な視点と地域の状況を踏まえて検討する必要がある」。

この記述は現計画と変わらず、要するに県は引き続き同センターの縮小等を検討する姿勢を保持しており、楽観は許されない状況にあるということです。そうでなくとも南部過疎地域に如何に医療資源を届けるかといった課題は厳然として横たわっています。

また、この後でも触れますが、今年になり帝京大学ちば総合医療センターの移転計画が浮上し大きな懸案事項となっています。

つまり当圏域の中核病院3施設のうち、2施設もが規模の縮小や移転などの検討を余儀なくされるという非常事態にあるのです。

そうでなくとも二次救急は常に綱渡り、小児二次救急は一部他圏域頼み。

さらに新型コロナウィルスのような新興感染症や災害時の対応の検証と備えも進めなければなりません。

このように、市原保健医療圏は実に様々な固有の課題を抱えているといえまするが、当局ではどのように認識しておられるのか、ご答弁願います。

(保健福祉部長)

はじめに、病床につきましては、令和3年に、厚生労働省が実施した「医療施設調査」によりますと、市原医療圏の人口10万人当たりの病床数は、759.6床と、千葉県全体の754.4床をわずかに上回っております。

次に、医療人材につきましては、厚生労働省における「令和2年医師・歯科医師・薬剤師統計」によりますと、市原医療圏の人口10万人当たりの医療施設従事医師数は、185.9人となっており、千葉県全体の205.8人を若干下回っている状況にあります。

また、就業看護職員数は、人口10万人当たり974.3人と、千葉県全体の972.6人と同水準であります。

このような医療資源の状況にある本市におきましては、辰巳台地区に「千葉ろうさい病院」、姉崎地区に「帝京大学ちば総合医療センター」、南総地区に「千葉県循環器病センター」と、いわゆる「基幹3病院」がバランス良く立地し、地域のクリニック等との連携の下に、必要な医療が提供されているものと認識しております。

しかしながら、過去には、千葉県循環器病センターの機能移転検討の件や、今般の帝京大学ちば総合医療センターの移転計画の件など、地域住民への医療提供体制に大きな影響を及ぼしかねない事案が生じております。

市といたしましては、その時々の課題を的確に捉えて、市原医療圏の医療体制の確保に、関係機関としっかり連携し、適切に対処していく必要があるものと考えております。

*将来の医療の需要供給予測について

次に、医療資源の将来見通しについて伺います。

「千葉県保健医療計画及び地域医療構想の策定に係る調査分析事業報告書」によれば、市原保健医療圏では75歳以上の人口は2014年から2030年までに81%増の5万683人となるが、その後微減傾向をたどると推計されています。

人口減少かつ高齢者の増加に伴い、今後10年間は肺炎や骨折といった疾患が増加し、逆に手術などの急性期医療のニーズは減少します。

若手の医師が症例数の多い環境を求めて都市部の大病院に流れるという現象、これは既に起きている話で、地域の救急医療はベッドがあっても医師がおらず、奪い合いによる共倒れも懸念されています。

専門的な医療を要する癌なども通院が一般的となり、入院の需要は減少する代わりに在宅医療など地域包括ケアを担う病院や診療所のニーズが高まります。

また、働く世代の減少により医療の担い手が更に減少する上、令和6年4月から医師の時間外労働の上限規制が始まることで、特に夜間当直が影響を受けるとの見方も出ています。

以上、医療従事者からの聴取も踏まえざっと挙げましたが、こういった医療の需要と供給の見込みやそれに基づく影響について、当局では現時点でどのように捉えておられるのか、お聞かせ願います。

保健福祉部長)

市原医療圏において、医療を特に必要とする75歳以上の人口は、2020年に約3万8千人、人口比14.4パーセントであったものが、2030年には、約4万9千人、人口比20パーセントにまで上昇し、ピークを迎え、その後も横ばい、ないし微減で推移する見込みであります。

また、高齢化の進行に伴い、医療需要は増大する一方、我が国の生産年齢人口が減少する中、医療従事者の確保も、また難しい局面を迎えることが予想され、医療の需給バランスにつきましては、需要超過に陥ることが懸念される状況にあると認識しております。

これに加え、来年4月から、いわゆる「働き方改革関連法」により、医師等については、労働基準法に定める時間外労働の上限規制が適用となり、これにより供給サイドでの調整圧力が生じるものと考えております。

市といたしましては、こうした予測に基づき、生活習慣病の発症予防や重症化予防に有効な「特定健康診査」の受診率の向上や、医療、介護の連携、フレイル予防を通じた健康寿命の延伸などに積極的に取り組み、医療への負荷低減を図りつつ、必要な医療体制の確保に取り組んでまいります。


(2)   帝京大学ちば総合医療センターの建て替え(移転)計画について 

 

*移転問題の経緯

同センターは1986年(昭和61)に姉崎に開院して以来37年間、本市の基幹病院としての役割を果たしてきましたが、今年6月、老朽化対策としての建て替え計画がちはら台への移転を伴うものであることが明らかとなりました。

市は帝京大学に対し現地での建て替え・存続を希望する旨を伝え、大学側の決定を待っている状況ですが、特に病院の近隣住民の動揺は大きく、不安の声が寄せられています。

 

*「立地バランス」の深掘りが必要

市長も再三述べられているように、市南西部の大学病院が市北東部の千葉市との境に移ることで、圏域内の立地上のバランスが大きく崩れるのは誰の目にも明らかです。

ただ、「立地バランス」という概念的な一言で行政も含めみな何となく分ったつもりになっているように思いますが、私はそこをきちんと掘り下げて分析する必要があると感じています。

例えば、救急車の受け入れ、救急車を使わず自力で救急外来を受診する「ウォークイン」の受け入れ、冒頭述べた4類型の病床、診療所等からの紹介による入院・通院、その逆の退院後の紹介など、総合病院の機能は多岐にわたります。

どの部分にどのような影響があると考えられるのでしょうか。

 

*マクロの視点が必要

また世論の傾向としても姉崎地区の課題と受け止められているようですが、私はもっとマクロの視点で捉えなければならないと思います。

同センターの動向は、市内のみならず、袖ケ浦市民や千葉医療圏にも影響が及ぶことも容易に想像されます。

現地建て替えにせよ移転にせよ、今後市が迅速に対策を講じるためにも、この際広域にわたる実態の把握やマッピングによる可視化といったアセスメントを行い、大所高所の視点から臨んで頂きたいのですが、ご見解をお聞かせ願います。

(保健福祉部長)

地域の医療施策を考える上で、医療需要を的確に把握することが重要であります。

医療需要の推計につきましては、人口、年齢構成比、疾病動向などマクロ的な分析に加え、地域の実情を捉えていく必要があると考えております。

現在、帝京大学ちば総合医療センターが移転を伴う建て替え計画を表明しておりますが、同センターは、1981年(昭和56年)当時、本市西部地区が、総合病院の空白地帯であるとして、本市が土地を無償譲渡、接道等を整備することを条件に誘致いたしました。

表明されている計画のとおり移転となりますと、同地区は、再び総合病院の空白地帯となることを、市といたしましては、危惧しているところであります。

この問題に加え、高齢者人口の増加を要因とする医療需要増加への対応も含め、現在、重要な局面を迎えているとの認識のもと、地域の実情をしっかりと分析し、必要な施策を検討してまいります。


どう転んでも市民に説明するための材料は必要だし、世論や思い込みに流されず適切に判断を下すためにも、しっかり取組んで下さい。


(3)   医療政策における市のスタンスについて 

 

*機能しなかった県の会議

このたびの帝京大学ちば総合医療センターの問題に関して、これまで県に積極的に介入する姿勢は見られませんでした。

今年開催された地域保健医療連携・地域医療構想調整会議の議事録に目を通しますと、県側から意見交換を求めた様子は無く「民間の判断であり、ましてや圏域内の移転だから関知しない」とのスタンスがよく分かります。

決定権が大学側にあることは確かですが、医療資源はまさに市民の命綱だから、民間の経営判断などと一言で片付けるわけにはいきません。

先日の県議会で市原の医療課題について一般質問があり、県は既存の会議を活用して市や各団体の意見を聞き検討するという趣旨の答弁をしました。

これまでこういった会議は地域の意向を吸い上げる場としてあまり機能してこなかっただけに、この答弁から今度は逆に、協議に臨む市側の姿勢も問われるのではないかと感じました。

 

*市が音頭を取る必要がある

これまで市は医療政策について、国や県の担当案件である事に加え、専門分野という遠慮意識も働いてか、積極的に介入してこなかったと思います。

しかし今後は市が自分たちの足元の問題として能動的に関わり、ボトムアップで県を動かすといった強い気持ちで臨む姿勢が必要です。

この際、大局的な観点から未来に向かって市自ら関係機関と積極的に協議し、圏域全体のグランドデザインを描く契機としていただきたいのですが、市長のご見解をお聞かせ願います。

(市長)

医療施策のうち医療の提供体制につきましては、医療法の規定により、各都道府県が地域の実情に応じて、医療計画を定めるものとされており、千葉県においては、現在、平成30年度から令和5年度までの6か年を計画期間とする「千葉県保健医療計画」により、各種施策が展開をされております。

次年度以降につきましては、令和6年度から令和11年度までの6か年を計画期間として、改訂作業が行われていると承知しております。

本市におきましては、千葉県保健医療計画が目指す基本理念「県民一人ひとりが、健やかに地域で暮らし、心豊かに長寿を全うできる総合的な保健医療システムづくり」のもと、本市の医療資源を有効に活用し、市民の皆様に必要な医療が提供されるよう、市原市医師会等と連携し、初期救急を担う市原市急病センターの運営、休日在宅当番医及び2次救急、小児2次救急などの体制を構築してまいりました。

また、県が示した保健医療計画において、必要な医療資源が、医療法人などの活動により、確保しがたい場合、市町村は自ら病院を設置、あるいは誘致する必要性が生じてまいります。

本市におきましては、昭和56年当時、現在の帝京大学ちば総合医療センターを姉崎地区に誘致し、地域に必要な医療資源を確保したところでありますが、同センターは現在、ちはら台地区への移転、建て替えを表明している状況にあります。 

帝京大学ちば総合医療センターがちはら台に移転した場合には、その影響を考慮した上で、医療を必要とする高齢者人口の増加など様々な要素を考慮して、医療体制を安定的に確保していかなければなりません。

私は、市民の安心・安全を守ることに、常に意を注いでおり、医療施策につきましては、まちづくりの重要な要素であると認識をしております。

今後、高齢者人口の増加による、医療需要の増加が見込まれる中、本市が必要とする医療体制が、千葉県の策定する保健医療計画に的確に反映されるよう、県との意思疎通を密にするとともに、市原市医師会をはじめとする医療関係者と連携しながら、強い思いをもって、地域医療の維持、向上に努めてまいります。


幸い市原保健医療圏は1市1圏域で、市がリーダーシップを発揮しやすい環境にあります。

医療介護総合確保促進法に基づく財政支援の地域医療介護総合確保基金も活用しない手はないと思います。

メディカルタウン・ウェルネスタウンといった、保健医療を切り口としたまちの創生という考え方をぜひ進めて頂きたいですし、もっと広い意味で、若い医師や看護師など医療従事者に選ばれるような、魅力あるまちの実現も引き続き目指して頂くよう要望します。


2.社会的孤立を防ぐためのアウトリーチ型支援の取組について 

*アウトリーチと社会的背景

アウトリーチは、英語で「手を伸ばす」という意味です。

様々な分野で使われますdが、元来社会福祉の領域で、助けが必要であるにもかかわらず自ら申し出ない方々に対して、積極的に働きかけ支援を届けることを指したものです。

大きく分けると、支援の必要性を自覚していなかったり相談意欲がなかったりといった潜在的なニーズを積極的に掘り起こす取組と、実際にその方々に支援サービスを届けるための取組の二つがあると考えられます。

人と人との繋がりの希薄化や単身世帯の増加など社会状況の変化を背景に、令和6年4月に孤独・孤立対策推進法が施行され、その重点計画にも「アウトリーチ型支援体制の構築」が盛り込まれています。

 

*アウトリーチ型支援の取組状況は

そこで伺います。

これまで当局は、地域共生社会の実現に向け令和3年度から開始した「重層的支援体制整備事業」や、R4年度に手上げしたモデル事業「地方版孤独・孤立対策官民連携プラットフォーム推進事業」など先進的に取組んでこられたが、そういった近年の様々な取組の中で進めてこられたアウトリーチ型支援の状況についてお聞かせ願います。

(保健福祉部長)

アウトリーチ支援は、困難な状況にあるにも関わらず、支援の必要性を自覚していない方や、相談意欲が無く、自ら相談に来ることをしない方に対して、支援者側から積極的に出向いて働きかける取組であり、本市でも、介護、障がい、子育て、生活困窮など、様々な分野で取り入れてまいりました。

これに加え、本市では、令和3年度に「福祉総合相談センター」を、令和4年度からは、市内9地区に「地区福祉総合相談センター」を設置し、世代や属性を問わない「包括的な相談体制」を構築するとともに、アウトリーチ支援体制の強化に取り組んできたところです。

ご質問の、アウトリーチ支援の状況につきましては、現在の体制となった令和4年度の実績で申し上げますと、年間のアウトリーチ件数は、66件でありました。

また、令和5年度では、9月末時点で67件となっており、体制構築によって、着実に支援の手が広がっているものと考えております。

事例をご紹介いたしますと、20代後半で引きこもりの男性と60代で認知症の父親の二人暮らし世帯について、自宅が競売にかけられ、退去が迫られている旨、不動産事業者から相談がありました。

直ちに、福祉総合相談センターの職員が自宅に赴き、状況を確認したところ、引きこもりの男性と父親、ともに判断能力等が極めて低く、退去の準備ができていない状況にあったため、父親につきましては、施設への入所を措置するとともに、補佐人の選任まで繋げたところであります。

また、引きこもりの男性につきましては、福祉総合相談センターや、中核地域生活支援センターが連携し、訪問やメールにより、根気よく接触し続け、生活保護の受給と、アパートへの転居に繋げたところであります。

市といたしましては、様々な機会から把握した、複合的な課題を抱える世帯や孤立した世帯を、適切な支援機関につなげることができるよう、関係機関と連携を図りながら、アウトリーチ支援を推進してまいります。

*質問のきっかけはひきこもりの家族会の要望

私が今回アウトリーチ型支援に着目したのは、ひきこもりの家族会の要望を伺ったことがきっかけですd。

ひきこもりの背景には障害や病が隠れているケースが多く、適切な支援サービスを受けるためにも医療の介入は必要不可欠ですが、本人が医療機関に出向くことは非常に困難で、ご家族は訪問診療の体制整備を切望しておられます。

 ただ、冒頭の医療課題とも重なるが、そもそも市原市は精神科医が県平均の半分以下という現状があり、その中で行政のできる範囲も限られ簡単にことが進まないのは重々承知しています。

しかしだからといって、行政がそこで思考を止めてしまうのは責任回避と言えるとも思います。

松戸市では、2016年度から在宅医療・介護連携推進事業として市が松戸市医師会に委託しアウトリーチ診療を実施しています。ひきこもり・ヤングケアラー・不登校等のケースに、日常生活圏域ごとに配置された医師等が訪問、弁護士や行政と連携し、医療サービスの提供や公的支援の申請などにつなげています。

 

*アウトリーチを取組の柱に

これは事例の一つですが、市原市も今後はアウトリーチ型支援を柱に据えて、更に次の展開へと取組を進めて頂きたいのですが、ご見解をお聞かせ願います。

(保健福祉部長)

アウトリーチ支援は、福祉総合相談センターの重要な取組みの一つと位置付ける一方で、アウトリーチ支援には、把握から支援に至るまでの難しさと、支援自体の難しさとが存在しております。

一般に、アウトリーチ支援を必要とする方は、様々な事情を抱えており、中には直接会うことを拒まれたり、信頼関係の構築に長い時間を要したりと、支援に至るまでに苦慮するケースも少なくありません。

 市といたしましては、このような支援が必要と思われる事案に対しましても、必要な支援の手を届けるために、関係機関との連携を密にしながら、粘り強く伴走的な支援を継続してまいりました。

 他方で、専門職等が出向く狭義のアウトリーチ支援だけではなく、より広い意味でのアウトリーチ支援といたしまして、例えば、様々な会議や関係機関とのネットワークの中から、潜在的な相談者を見つけることが挙げられます。

さらに、地域にサポートをしてくれる人を増やす取組のほか、支援が必要な人が支援につながるような場を創出するなど、専門職などの支援者にアクセスしやすい体制を構築する、といった取組も考えられます。

 今後、市では、アウトリーチ支援を含む重層的支援体制整備事業の推進に加え、支援が必要な人を包み込む、孤独・孤立対策のネットワーク構築に一体的に取り組むことで、支援体制のさらなる強化に取り組んでまいります。


昨日の一般質問でもありましたが、庁内の横の連携の仕組みの強化も必要です。
今後策定される総合計画や個別計画にも反映されることを期待します。


3.新たな総合計画の策定について 

*これまでの経過

小出市長は令和5年第2回定例会で、総合計画の最終年度2026年を前倒しして、新たな総合計画を策定すると表明されました。

もともと実行計画は社会状況の変化に対応するため毎年度ローリングする手法が用いられてきましdたし、大きな軌道修正が必要だとしても基本計画の改定という手段もあったはずですが、それでは収まらないレベルの変革が必要とのご決断と理解しています。

 

*策定方針案について

このほど示された策定方針案の中身を見ますと、まず計画の土台である目指す方向性については「多様性・包摂性・持続可能性」と「EBPM(証拠に基づく政策立案)」を掲げています。

そして策定に当たっては、対話を重視し、特に若者・女性の参画を強化。基本構想は従来のような抽象的な理想像ありきではなく、基本計画も同時に策定することで具体性・実効性を確保。各部局の職員も市民対話に加わる、といった視点が示されています。

本方針案からは、これまで成長拡大を目指してきたマッチョな政策からの脱却というまさに大きな方向転換の決意が確かに感じられ、私たちは最大限評価しています。

 

*現計画の検証を

計画の策定に向けて、さっそく今年10月にいちはら未来会議が開かれ、無作為抽出により選出された市民がまちの未来の姿についてワークを行いました。私も傍聴させていただき、総合計画は他でもない自分たちのものだという気付きが、参加者間でしっかり共有されていたと感じました。

ただやはり、行政が現計画をどう総括しているかというメッセージが足りなかったことは否めませんでした。これまでの取組内容やアウトプットレベルの施策効果の説明はありましdたが、効果があったのであれば新たに作り直す必要は無いはです。

行政と市民が真に同じ土俵で対話しより良い計画とするためには、効果が今ひとつだった点もしっかり直視し(むしろそちらの方が大事)、その中身を極力オープンにすることが必要不可欠ではないでしょうか。

策定に当たり現計画を総括することについて、ご見解をお聞かせ願います。

(企画部長)

「新たな市原市総合計画策定方針案」では、これまで以上に市民との対話を重視しております。

市民対話を進めるにあたり、3つのキーワード「共有」「共感」「共創」が非常に重要であると考えております。

「共有」につきましては、市民の皆さんと本市の現状や課題をしっかりと共有し、透明性を確保することで信頼関係を構築し、活発な意見交換が行えるよう「開かれた」対話の場づくりを進めてまいります。

具体的な取組としましては、「対話のためのデータ集」として、現総合計画の成果や課題、今後のまちづくりを考える上で参考となる各種データ等を取りまとめ、市民の皆さまに分かりやすく提供し、市民対話に活用してまいります。

次に「共感」につきましては、各地域や様々な立場の市民の皆さま一人一人が抱える課題や思いに共感し、それぞれの立場を尊重した「建設的な」対話の場づくりを進め、包括的かつ現実的な計画づくりにつなげてまいります。

さらに「共創」では、市民、各種団体、事業者と市が一体となってビジョンを描き、新たな発想による解決策を導き出すなど、積極的な意見や提案が出る「創造的な」対話の場づくりを進めてまいります。

新たな総合計画の策定にあたりましては、潜在する課題や多様なニーズを捉え、市民本位の計画となるよう、効果的な市民対話を行ってまいります。

*ウェルビーイングをどう定義し「見える化」するか

市長は先の所信表明において「人口減少社会にあっても誰もが自分らしく生き生きと暮らし、市民一人一人が幸せを実感できる、いわゆるウェルビーイングの高いまちを追求していきたい」と述べられました。そのお考えには心から賛同いたします。

ウェルビーイングは、いまや経済的な指標であるGDPに代わる指標として注目されています。

近年総合計画に取り入れる自治体も増えていますがその定義は様々で、ウェルビーイングに関連する要因を「見える化」して豊かさを把握する試みも行われています。

例えば東京都荒川区では、2005年からプロジェクトを立ち上げ、独自に区民の幸福度を測定し、政策に反映しています。 民間と大学が連携し、幸せを様々な観点から計測するサービスも開発されています。

本市の新たな総合計画においてもウェルビーイングは重要な視点となると思いますが、単なる観念的な抽象論で済ませるのでは無く、その定義を明確にし、評価指標などの「見える化」により例外なくEBPMの取組に組み込むことで着実に推進して頂きたいのですが、ご見解をお聞かせ願います。

(企画部長)

かつての総合計画は、人口増を目標に掲げ、都市としての成長・発展に焦点をあててきましたが、本格的な人口減少社会の到来を受け止め、市民一人一人の幸福度や満足度に焦点をあてるなど、計画策定の視点を量から質へと大きく転換する時期に来ていると考えております。

そこで、新たな総合計画策定にあたり、「ウェルビーイング」という考え方は非常に重要であると捉えております。

「ウェルビーイング」とは、身体的、精神的、社会的に良好な状態を保つことを意味し、市民一人一人の幸福度や生活の質を向上させることを目指す考え方です。

コロナ禍により貧困や孤独・孤立の問題が顕在化したことや、健康や人々のつながりの重要性が再認識されたことで、誰もが自分らしく生き生きと暮らせる社会の実現がより一層求められるようになっています。

また、SDGsとの親和性が高く、ウェルビーイングの追求がSDGs達成に貢献し、SDGs達成が市民一人一人のウェルビーイング向上にもつながると認識しております。

このようなことから、新たな総合計画の策定にあたりましては、市民対話においてウェルビーイングの考え方、これを参考に、その概念だとか、定義、指標、こういったものを市として「たたき台」としてお示しした中で、市民の皆様と対話を進めた中で、計画の中に反映してまいりたいと考えております。


*こんな総合計画に

新たな総合計画は、人口減少や人口構成の変化を前提としたものとなります。その中でどのように幸福度の高いまちを作っていくか。

策定に当たっては、くれぐれも社会的に弱い立場の人々の権利擁護と余裕のある人々の自己実現を、安易に「ウェルビーイング」とひとくくりにすることのないよう、ご留意願います。

感染症も災害も、危機は常に社会の脆弱な部分に襲いかかります。その部分を核とした地域作りがいま求められていると思います。

以上申し述べて、質問を終わります。