令和5年 第1回市原市議会定例会議 議案質疑 意見陳述 森山かおる
令和5年第1回定例会
議案質疑 森山かおる
議案第6号は市原市拠点まちづくりビジョンの実現に向けた、拠点形成の推進に資するため、市原市拠点形成基金を設置しようとするものです。
市では、市原市総合計画に掲げている、活力と魅力に溢れる持続的なまちの実現に向け、令和3年3月にJR3駅周辺における公民連携によるまちづくりの基本的な方向性を示した「市原市拠点まちづくりビジョン」を策定し、更に令和4年10月には同ビジョンを実現させるために、JR3駅のうち五井駅周辺における土地利用の方針等を示す「市原市拠点別整備基本計画(五井編)」を策定されました。
この計画によるとR8年度に約54haの農業振興地域の農用地区を市街化区域へ編入し、その後、土地区画整理により文化交流ゾーン・商業賑わいゾーン・教育ゾーン・住宅ゾーン・産業ゾーン・グリーン産業ゾーンを整備するという、これまでにないスケールのまちづくりに着手されることになります。
また来年度に策定予定の拠点整備基本計画(八幡宿編・姉ヶ崎編)も踏まえて、その財源を確保するために新たに基金を創設し、区画整理や道路・インフラ等ハード事業に関する資金を積み立てることに異論はありませんが、同計画を進めるにあたって3点確認させていただきます。
1.市原市拠点別整備基本計画(五井編)のロードマップによると、R8年までに地権者合意形成・業務代行者決定・組合設立認可、その後はR14年まで基盤整備工事としか示されていませんが、各ゾーンにおける民間参入など、全体的な計画の見通しはできているのでしょうか。
(都市部長)
議案第6号 市原市拠点形成基金条例の制定について、お答えいたします。
拠点別整備基本計画(五井編)では、五井駅東口周辺の市街化調整区域の一部について、組合施行 方式を前提とする土地区画整理事業によって拠点 まちづくりを進めることとしており、これまで地権者の皆さんや関係機関等と協議・調整を図ってまいりました。
全体的な計画の見通しと致しましては、令和5年度中に、各ゾーンにおける土地利用方針の具現化に向け、今年3月に設立予定の(仮称)開発協議会と、公募により選定される土地区画整理事業等における事業協力者及び市の3者が連携を図りながら、各ゾーンの土地利用計画を含めた事業計画の素案を作成してまいります。
また、事業計画の素案をもとに、令和6年度から7年度にかけまして、各ゾーンに参入する民間企業等の選定を行い、令和8年度中の土地区画整理組合の設立を目指してまいります。
土地区画整理組合の設立後は、造成工事やインフラ工事を行うとともに、文化交流施設や、商業施設等の建設を進め、令和14年度を目途に、土地区画整理区域の全域において、土地の使用収益が開始できるよう取り組んでまいります。
2.次に資金計画について伺います。
来年度予算案では財政調整基金から30億円を市原市拠点形成基金に積み立てることから、計画を推進していくためには相当な費用がかかると想定できます。
創設される基金から充当しようとする区画整理や道路・インフラ等のハード事業について、総事業費の概算はいくらぐらいになるのか。
また、創設される市原市拠点形成基金条例、第2条では、基金として積み立てる金額は各会計年度の予算をもって定めるとありますが、積み立ての基準や目標額についてお伺いします。
(都市部長)
今後、地権者の皆さんや事業協力者等と連携を図りながら、資金計画等を含めた事業計画の策定に取組むものであり、この過程の中で、事業費等を精査する予定でございます。
また、八幡宿駅周辺や姉ケ崎駅周辺につきましては、現在、拠点別整備基本計画の策定に向け、取組を進めているところであり、今後、地域の皆様を始め、様々な関係者の御意見を伺いながら、事業内容等を精査していく予定であります。
このことから、現段階では、総事業費の概算額や 基金として積み立てる目標額について、お示しすることが出来ない状況ではありますが、今後、概算額が精査され次第、段階的にお示ししてまいります。
なお、基金として積み立てる基準につきましては、関係部局と連携し、毎年度、財政状況等を踏まえながら、積立金額を検討してまいります。
3.基金は「入り」は分かりますが、「出」は一般財源に繰り入れられるため使途の確認が容易ではありません。今後、拠点別整備基本計画の進め方として、創設される基金の「出」を「入り」と比較して確認できるよう、議会に示していただけるのでしょうか。
(都市部長)
基金につきましては、毎年度の決算において、 現在高や増減高について、財産調書として議会に提出し、その認定を受けているところであります。
今後、拠点形成基金につきましては、具体的に どの事業に、どの程度充当されているのか、また、拠点形成に係る事業費の累計額等についても、適宜、議会へ説明してまいります。
令和5年第1回定例会 意見陳述 森山かおる
市民ネットワークの森山薫です。
これより会派を代表して、令和5年度市原市一般会計並びに特別・企業各会計予算案について、総括的な見地から意見陳述を行います。
ここでは特に気になった点に絞って述べさせていただきます。
市長並びに執行部におかれましては、分科会審査で申し上げた事項も含め、ご勘案いただきますよう、予め要望いたします。
*エビデンスに基づいた事業の立案選定について
私たちは事業立案についてエビデンス(根拠)を明確にするよう求めてきました。
R5年度の実行計画策定及び予算編成上の留意点として、新規事業や重点事業
を対象に、根拠や事業効果を検証するなど、エビデンスに基づき立案・選定を行うという方針が出されたこと自体は評価していおります。
しかしながら予算案の主要事業においては、明確な目標値がないものや、交流人口・関係人口の創出や拡大といった漠然とした事業効果しか示されていない等、エビデンスが不明確な事業が散見されました。
政策マーケティング室が今年度設置されたことから、今後は事業効果をより明確にするために、各種データ収集に努め的確なエビデンスに基づいた事業の立案選定に取組むとともに、その過程についても分かりやすく市民に公表するようお願いします。
*コンパクト・プラス・ネットワークについて
予算案ではR5年度から着手する五井駅周辺の拠点形成を進めるため、五井駅周辺市街地整備推進事業、文化交流施設整備事業に約2億2千万円、区画整理や道路・インフラ等ハード事業に関する資金に充てるための拠点形成基金に30億円を積み立てるなど、34億4千万円が計上されております。
約54haの農用地を市街化区域に編入し、これまでにないスケールのまちづくに期待が膨らむものの、総額予算は示されず言わば見切り発車状態。計画期間が
伸びれば費用が更に膨らむことも想定できるだけに、正直なところ不安もつきまといます。
東京五輪・パラリンピックで恒久施設として建設された競技場などは、大会後に多くの施設で収支に苦しむ事となり、負の遺産になっているとうニュースもあります。
こうした事態を招かないよう、地権者との合意形成や民間参入のための調査をしっかり行い、将来の見通しをもった上で慎重に事業を進めるよう求めます。
また、コンパクト・プラス・ネットワークの考え方に従えば、拠点形成と共に足並みを揃えて取組まなければならないのは交通アクセスです。公共交通の利便性向上はもちろんのこと、市民の移動手段として最も多く利用されているのが自家用車という現状を鑑みて、道路インフラや駐車場の整備についても考慮されるよう要望します。
*公共資産マネジメントについて
公共資産マネジメント推進計画が策定されてから丸7年が経過。本計画には将来に向けて計画的かつスピード感をもって配置の最適化を進めるとありますが、R2年度に個別施設計画が出揃ったにもかかわらず、肝心の事業実施計画はまだ策定中で、出遅れ感が否めません。
そのような中で、R5年度には優先的保全事業として、中央図書館、中央武道館、公民館、コミュニティセンターなどの改修工事に係る経費として、継続費及び債務負担行為設定を含めて約9億8,400万円が計上されております。
施設の老朽化により雨漏りなど早急な対応が必要であることは理解しますが、個別施設の状況を比較した上でどのように優先順位を決定したのかといった判断基準が示されていません。
公共資産マネジメントの目的は、人口減少に伴う持続可能な行財政経営を確立することです。
従って、市の財政運営にも大きな影響を及ぼすことから、個別施設計画を反映させた事業実施計画を着実に進め、公共施設は市民の財産であることを意識して市民にも分かりやすく公表するよう求めます。
*障害児者等への支援について
これまで私たちが要望してきた人工呼吸器が必要な方への非常電源購入補助や、避難行動要支援者の個別避難計画に福祉関係者が関わる仕組みの構築など、生命に関わる支援が強化されたことを評価しております。
また学校のバリアフリー化事業においては、4年度から本格的に着手され、R5年度では小中学校のトイレ環境整備事業として1億4,560万円が計上されております。これまで取組みが遅れていましたが、本腰を入れた急ピッチな取組みにより、R7年度までにトイレのバリアフリー化は100%、スロープ設置についてもほぼ100%。県内トップクラスのバリアフリー化の取組みについても評価しております。
一方、分科会審査において、療育を必要とする児童への支援については取組の弱さを感じました。
発達支援センターは2年前に児童福祉法に基づく児童発達支援センターに移行したことにより、市内の中核的な療育施設として地域支援の強化が求められました。しかし保育所等訪問支援事業については、事業者への周知がなされてないことや、利用回数についても市独自の考え方が反映されておりませんでした。
更に療育ルームに関しては、通園日が少なく通園時間も短いために、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が揃う発達支援センターの強みが生かされていないと感じました。
ついては、療育が必要な子どもと保護者や、それを取り巻く事業所などへの支援の強化とともに、保護者にとって将来に渡る子育てのバイブルとなるような魅力ある療育内容を追究するよう要望します。
加えて、療育相談の機能をもつことになる(仮称)子ども未来館においても、来訪者が気軽に相談できる場として活用されるよう、重ねてお願い致します。
*民間活用のあり方について
実行計画(令和5年度版)策定方針及び令和5年度予算編成方針では、新行財政改革アクションプラン2023の実行が示されており、その一つに「民間委託・公民連携などあらゆる視点から実施手法の最適化を図る」とされています。
今や各種計画策定をコンサルに委託するといった手法が当然のように行われ、ここ数年ではアドバイザーやコーディネーターを配置する事業が増えてきました。
R5年度の主要事業においても、計画策定支援の委託やアドバイザー・コーディネーターなどの配置に4億6,825万円が計上されております。
そこで2つの問題点について指摘させていただきます。
一つ目は民間活用によるデメリットについて。
職員が効率的に業務に取り組むための活用であれば問題はありませんが、民間任せになることで職員が主体性を失いオリジナルな発想が持てなくなるなど、職員のスキル低下を招く懸念が生じます。
従って、組織のモチベーションや職員の人材育成とのバランスを考慮し、適性を見極めて慎重に行っていただくよう要望する。
二つ目は、特にアドバイザーやコーディネーターの選定について。
過去の実績からも、その多くが入札やプロポーザルによらない随意契約になると推測しますが、その相手先の意向や成果物によって、市の方向性が決まってしまうことになれば、市民サービスに大きな影響を及ぼすことが懸念されます。
しかも市原市の場合は、これら随意契約の状況は公開されておらず、どのような理由で選定したのかが全く分からないブラックボックス状態です。
今一度、地方自治法施行令167条第2項に照らし合わせ、随意契約とした理由や選定理由、契約の相手方や契約金額を明確にし、市民に公開するよう求めます。
*市民との対話について
市政運営の根幹に据えて取組んでいるのが「対話と連携」。これまでも様々な事業においてワークショップなどの手法を用いて市民との対話を設けられており、R5年度においても、拠点別整備計画(五井編)を推進するための文化交流施設や五井会館等リノベーションなどでワークショップを開催することになっています。
そこで意を用いていただきたいのが、市民と行政が対等の立場で話し合える場にすると言うこと。これまで私が傍聴してきたワークショップでは、市の財政状況や近隣施設の利活用方針など市全体の情報提供が示されないものもあり、夢を語る積み上げ方式という印象を持ちました。市民の声を聞くというスタンスだけでは真の対話にはなりませんし、現に一部の市民からは「意見を聞きましたというアリバイ作りだ」との声も耳にしています。
また、そこで出された様々な意見や要望に対して、丁寧に耳を傾けて調査を行わなければ、参加した市民は満足しません。
対話は情報共有があってこそ成り立つものですが、今のままだと対話をすればする程、市民からの信頼を損なうのではないかと危惧しています。
市民と行政が対等の立場で話し合える「対話のあり方」について、真摯に考えていただくよう要望します。
*財政運営について
一般会計はR4年度当初予算と比較すると、個人・法人市民税、固定資産税の伸びにより市税は4.2%増の522億6,200万円を計上。歳入全体としては前年度比2.9%増の1,082億5千万円で、特別・企業会計を合わせると1,813億6,620万円の過去最大の予算規模となりました。
新型コロナウィルス感染症という災禍に見舞われる中、R4年度から税収の伸びが続いていることからも市内経済の回復を感じ取ることができました。
しかしながら緊迫したウクライナ情勢は1年以上も続き、原油価格を始めとする物価高騰などにより、市民や市内企業への影響が懸念されます。
また、財政指標については改善しているものの、実質収支比率はR2年度8.9%、R3年度11.8%であり、好ましいとされる3〜5%を超えています。
従って、引き続き不透明な社会経済状況を踏まえながら、市民の福祉向上に確実に振り向けられるよう、適切な事業執行を望みます。
*まとめ
種々申し上げましたが、これより結論を申し上げます。
先程述べた人工呼吸器が必要な方への非常電源購入補助や、避難行動要支援者の個別避難計画に福祉関係者が関わる仕組みの構築の他に、母子保健に係る支援メニューの見直し、家庭児童相談員の増員、外国にルーツをもつ子どもへの日本語学習支援の拡充、ヤングケアラー支援体制の強化、生活困窮者自立支援事業として取組まれてきた子どもの学習支援のバージョンアップなど、これまで市民ネットワークが求めてきたマイノリティなどへの支援策が強化されたことを評価し、令和5年度市原市一般会計並びに特別・企業各会計予算案について賛成と致します。