令和4年第3回市原市議会定例会 令和3年度決算 総括質疑・意見陳述

総括質疑

まず始めに、R3年度予算編成方針の柱の一つ「新たな日常への変革と持続可能なまちの実現」のうち、オープンイノベーションプロジェクトの推進について質疑します。

オープンイノベーションプロジェクトは行政や企業の枠組みに捉われず、産官学連携により複雑多様化する地域課題の解決に取組むものです。

R2年度から始まり、R3年度と合わせて9,215万2千円の決算額。

この2年間で民間から地域課題解決のためのアイデアを募り、6企業と、報奨金を出すビジネスコンテストで17組が採択されました。

事業シートによると6企業のうち実証事業を実施できたのは3企業のみとなっています。行財政改革アクションプラン2の実績報告書(P85)によると、このプロジェクトを含めた公民連携事業により、就職または起業した若者・女性の目標値をR3年度20人としていましたが、たった3人と低迷しております。

しかも、その取組状況については、フレイル予防・改善サービス事業や子ども見守り事業等、僅か数事業の実証事業や活動状況について報告されただけで、どのような地域課題に対して、どう取組んでいるのか見えてきません。

また、R2年度の決算審査において情報公開の不充分さを指摘したところ「早急に対応する」との事だったが、状況は全く変わっておりません。

更に丸2年が経過したにも関わらず、事業シートには目標値がないどころか前年度の実績すら記載されていません。果たしてコロナ禍においてこのような謎のプロジェクトが必要だったのか、理解に苦しみます。

2年間を経て、このプロジェクトの課題をどう捉えているのか、又今後どのように取組んでいくのか、お聞かせ願います。

(経済部長)

オープンイノベーションプロジェクトの課題及び今後の取組について、お答えいたします。

本事業は、人口減少・少子高齢化などに伴い複雑多様化する地域課題に対し、民間企業のICT等の先進技術や、若者の柔軟なアイデアなどを、新たなビジネス機会の創出という観点から本市に呼び込むことで、公民連携による課題解決を進め、もって、住みたい・住み続けたいまちの実現につなげるものであります。

現在、市内外のベンチャー企業からの提案を受け連携して地域課題の解決に資する実証事業を行う「いちはら未来創造プログラム 通称いちミラ」、及び、市内の地域資源を活用して起業・創業を目指す、意欲ある若者を応援する「いちミラビジネスコンテスト」の2事業を中心に取組を進めているところであります。

こうした中、これまでの課題といたしましては、主に2点でございます。

1点目は、ターゲットの明確化です。

本市をフィールドとした実証事業の提案を求める「いちミラ」では、第1弾として、現状の行政課題全般を提示し、幅広く民間提案を求めたところであります。

その結果、72事業者から貴重な提案をいただき、多くの反響を得たところでありますが、一方で、市として重点的に取り組むべき課題に焦点を絞って提案を募集することで、より実践的で成果向上につながる解決策の提案を得られるものと考えており、現在、庁内で、ターゲットの明確化への議論を進めているところであります。

2点目は、オープンイノベーションで応募、提案をいただいた企業や若者への伴走型の支援や、市内企業との連携促進などのアフターフォローであります。

このことにより、新たなビジネスを地域産業として定着させ、波及効果を高めていくことで、本市経済の活性化や若者の定住促進につなげることが最も重要であります。

そこで、まずは、オープンイノベーションに係る企業や若者への伴走型支援ができるよう、今年度は、ビジネスコンテストの応募の段階から商工会議所等の関係団体と連携を密にするなど、支援強化に取り組んでいるところであります。

さらに今後におきましては、サンプラザ市原における新たな産業創造拠点の整備を進める中で、市内外の企業や人材の交流・マッチングの場づくり、関係団体や臨海部企業、大学などの研究機関との連携による更なる支援強化に取り組み、新たな産業や雇用の場創出につなげてまいります。

当初の事業目的は、若者の定住化や魅力ある都市の形成を実現する事でしたが、アイデア募集のテーマは、交通・医療・子育て・農業など何でもありで、的が絞れていませんでした。

それがゴール設定の曖昧さにも繋がっていたのだと思います。

ターゲットを明確にした新たな事業スキームで取組まれることを期待しています。

意見陳述

これより、特に気になった点に絞って意見陳述を行います。

市長並びに執行部におかれては、分科会で申し上げた事項と合わせてご勘案いただくよう、予め要望致します。

子育て世帯の信頼を回復し安心して子育てができるまちの実現について

R3年度は前年に起きた乳児衰弱死事件を受けて、児童虐待防止施策が強化され7つの新規事業の他にも事業を拡充して取組まれました。

スーパーバイザーの設置、未就園児等全戸訪問、地域巡回支援事業など、評価できるものもありましたが、地域主体の子ども見守り強化事業では見立ての甘さから、市が当初予定していた300件の訪問が、委託側の事情により9件しか実施されなかったことが分科会審査で明らかになりました。

また子育て短期支援事業、出産前後家事等サポート事業、産後ケア事業については、対象年齢や利用期間などを見直して取組まれたが、近隣市と比較してみると本市の利用料金が高く対象年齢の幅が狭いケースも見受けられました。

安心して子育てができるまちの実現を推し進めるために、更なる制度の見直しに努めるよう求めます。

オリンピック・パラリンピック等のレガシーの創出について

 コロナ禍においての開催であったため、ホストタウン事業についてはキャンプ中止という結果となりましたが、施設のクオリティの認知度向上、パラアスリートの周知やパラスポーツの普及、ラグビーのキャンプ地などを通した連携協定の締結などに取組まれました。

中でもオリンピック・パラリンピックを契機に、私たちが特に注目しているのは取組方針の一つ、多様性を認め合う共生社会の実現。これを着実に推進することでレガシーに繋げられるよう、今後はボッチャなどユニバーサルスポーツの普及や多文化共生を意識し、継続して取組んでいただくよう要望します。

基礎学力向上への取組みについて

基礎学力定着推進事業に加え、R2年度から始まった授業魅力化推進事業と併せて、市全体の学力向上に取組んでおられます。

しかしR3年度の全国学力・学習状況調査結果では、小学6年生の算数、中学3年生の国語ともに、全国平均に対して100%以上の目標を掲げていたが算数95%、国語94.4%。

基礎学力を身につけることは、将来の選択肢を増やすだけでなく、生涯年収にも影響を及ぼします。

市ではSDGsリーディングプロジェクトとして、子ども・若者の貧困対策に取組んでいることから、貧困の連鎖を断ち切るといった観点からも、基礎学力向上への取組を強化するよう要望します。

PDCAサイクルについて

PDCAとは綿密に事業計画を立てて実行し、その善し悪しを検証して改善することで事業の価値を高めていくものです。

ところが決算審査が始まるまでに必要な資料が揃わない事態がこの1年間続いております。R3年度決算審査においては、行財政改革アクションプランⅡの実施状況報告書が公開されたのは分科会審査が始まる直前。 R2年度決算審査では事業シートが公開されたのは分科会審査2日目になってから。

このように事業評価が後回しになっている状況で、PDCAサイクルがきちんと回わせているのか懸念されます。

的確なPDCAサイクルを回して適切な時期に公開し、次年度予算に反映されるよう望みます。

事業スキームの甘さについて

先程述べたオープンイノベーション、地域主体の子ども見守り強化事業と同様に事業スキームの甘さが散見されました。例を挙げると新型コロナウィルス感染症対応地方創生臨時交付金を活用した大規模イベント実証実験事業。

コロナ禍においても上総国府祭りの開催を可能にするための事業でありましたが、コロナ禍で実証実験が出来ずマニュアル策定に留まったという、誠にお粗末な結果となり、結局今年度の開催も中止となりました。

停滞する市内経済を少しでも盛り返したいという思いが先走り、地に足がついてなかったのではないでしょうか。

今後、事業立案にあたっては変化する社会情勢を見据え、熟慮を重ねて取組むよう要望します。

財政運営について

R3年度当初予算では新型コロナウィルス感染症、税制改正、経済の停滞と雇用への影響などにより、市税収入は前年度よりマイナス22億円という過去最大規模の減収を見込まれていましたが、R3年度決算では企業の設備投資等により固定資産税が増加したことで前年度より9.7億円の増額となり、予算編成時点の見込みと大きく異なる結果となりました。

これにより経常収支比率は2.7ポイント改善、実質公債費率も0.5ポイント改善され、市債残高を19億円減らし、基金残高合計は25億の増となっており、概ね良好に推移していると判断します。

しかしながら、実質収支は前年度比30.3%増の63億6913万円。実質収支比率は前年度比2.9ポイント上昇し11.8%。ここ3年間、好ましいとされる3〜5%を超えているため、適切な財政運営に努めていただくよう要望します。

公共交通施策について

R3年度はバス路線の運行計画案、交通空白地域における新たな交通モードを提案するための地域別対応方策を作成されました。これまで遅々として進まなかった公共交通施策に漸く踏み出されたことは評価していますが、市民アンケートや過去10年間に移住された方のアンケート調査からも、公共交通の利便性向上は本市の一番の課題であり、暮らしやすい生活を支えるための市政運営を行っているかどうかという重要なテーマでもあります。

現在実施しているデマンドタクシーやコミュニティバスも含めた交通空白・不便地域の解消については、地域住民に対して人的・経済的負担を過度に強いることがない仕組み作りに努めるよう求めます。

職員の能力を最大限に発揮できる労働環境について

分科会審査において特定の部署の過酷な労働環境が浮き彫りになりました。

市民生活の深刻な相談に係る窓口である、福祉総合相談センターや子ども家庭総合支援課は恒常的に時間外勤務が多いこと。またR3年度の芸術際推進課では時間外勤務が一人当り年間700時間超え、ワクチン対策室よりも多いことから相当過酷な労働条件であったことが推察されます。

このような状況では職員は疲弊し仕事に対するモチベーションが上がらず、その結果、市民サービスの低下を招くことにもなります。事業のスクラップがまだまだ不充分なため、適切な人材配置が出来ていないと感じました。

人を大切に出来ない組織に発展は望めません。今の市原市は金属疲労ならぬ組織疲労に陥っているように思えてなりません。

R3年度は市民サービス向上のためにクレドブックを作成されましたが、市のビジョンや経営理念を職員に浸透させる以前に、積極的に事業スクラップを行ったうえで労働環境の見直しを図るよう要望します。

以上、これより結論を申し上げます。

市民ネットワークはR3年度当初予算に対し、コロナ禍における市民ニーズと施策のギャップがあることを理由に反対しました。

予算配分には問題があったものの、予測がつかない社会情勢の中で新型コロナウィルス感染症対策の対応に追われながらも、予算執行に努力されたことを分科会審査の過程で感じることが出来ました。

従って、市民ネットワークはR3年度市原市一般会計並びに特別・企業各会計決算について認定致します。