平成23年度 第4回市原市議会定例会 12月12日(月)

【個別質問】 小沢 みか

1. 発達障がい児支援について

(1) 発達支援センターについて

1.相談体制について

本市における発達障がい児への取り組みは、市原市発達支援センターが、H17年に療育相談室、マザーズホーム、ことばの教室の三つの部門を設置し、訓練や療育、家族への助言など、さまざまな支援を行っている。
H22年12月議会での市民ネットの質問に対し、電話での相談の申し込みから初回面談まで1か月待ちのケースもあるとのご答弁があった。

質問1
H22年度の新規の外来療育相談は160人と、三年前の123人より約3割増加しているが、
現在、相談体制はどのように敷かれ、初回面談までの待機日数の改善はどの程度図られているのか、お聞かせ願う。

答弁
専属の相談員として嘱託の嘱託相談員を1名雇用し、他に児童の状態に合わせて言語聴覚士や理学療法士、看護師など少なくとも2名が同席している。
さらに、粗大・微細な運動等に関して専門的な知見が必要な場合は、作業療法士が関わるとともに、療育相談員による発達検査なども行いながら対応を図っている。
このように専門職の連携を強化させたことにより、今年度は受付日から2~3週間で初回相談をじっしすることができている。

質問2
申し込みからほぼ2週間以内で初回面談に入れているということで、評価する。
それでは次に、初回面談以降の取り組みについて伺う。
家族が必要なときに何度でも相談できるよう十分な体制がとられているのか、家族が子どもの障がいを受容できるよう、カウンセリングの機能はしっかりと果たされているのか、以上の点をお聞かせ願う。

答弁
ことばのみの問題であれば「ことばの教室」での個別指導を行い、未歩行などの身体面の不安のある児童に対しては個別の機能訓練を実施している。
これら以外の発達の遅れが気になる児童については、個別やグループでの相談を組み、発達を促すためのフォローを繰り返し行っている。
いずれの場合も、保護者と面談する時間を十分に設けている。

質問3
それでは、学齢に達したお子さんに対する取り組みは、如何か。学校に上がっても切れ目なく相談に応じることができているのか。お聞かせ願う。

答弁
まず、学校に対しては申し送りをしている。その後は、保護者からの連絡を受け、学校への訪問などを行っている。
また、必要に応じて教育センターなどの関係機関と連携している。親が子供をまるごと受容し、子育てに前向きに取り組むことがきる家庭環境は、幼い子どもにとって、いかなる専門的な療育よりも効果的である。
従って、家族に対する相談支援は、継続的なカウンセリング機能が十分に果たされたものでなければならない。体制の充実と同時に、カウンセリングスキルのレベルアップには力を入れて取り組んで頂くよう要望する。
そして、幼児期から継続して受けられた相談支援が、学校に上がったとたんに途絶えてしまうという、いわゆる縦割りの体制は、保護者や子供に対し非常に大きな不安を与える。
教育センターとの連携はもちろんのこと、切れ目のない支援をぜひお願いする。

2.相談後のフォローについて

質問1
H22年度の新規相談者160名が、今年度どのように移行しているのか伺ったところ、マザーズホームや言葉の教室での療育47名、幼稚園・保育所・学校へ39名、相談継続31名、その他(転出、連絡なしなど)43名ということであった。
初回面談に来られたケースのうち、約半数強の子供がマザーズホームあるいは保育所などで何らかの支援を継続して受けているといえるが、私が危惧するのは、それ以外のお子さんへのフォローである。
例えばこの相談継続31人に対してはどのような体制がとられているのか、お聞かせ願う。

答弁
グループでの相談や個別相談に振り分け、月1回の頻度で対応している。

質問2
月に一度では、日々成長していく時期の子供を育てる保護者の不安や焦りは解消されないのではないか。その点についてはいかがか。

答弁
幼稚園・保育園に通園している児童が主なため、月に1回としている。
身辺処理が未自立な場合は、児童デイサービスの利用を案内している。
今後は幼稚園・保育園などへの巡回指導なども踏まえながら、適切な支援がはかられるよう検討する。

質問3
では次に、連絡が途絶えたその他のケースについて伺う。
何か心配があったらまた相談して・・・という「待ち」の姿勢ではなく、例えば、定期的に様子を尋ねたり、保護者対象の講演会を開いたり、遊びを取り入れたイベントなどを開催し参加を呼びかけるなど、相談後もセンターに気軽に足を運んでもらえるような取り組みについては、如何か。

答弁
保護者からの申し出で途絶える場合もあるが、可能な場合はまずは電話で状況の確認をしている。
講演やイベントについては、発達障害に関する講演や、サンハートとの連携により定期的に実施している母子の交流の場の案内など、必要な支援を行っていきたい。
加えて、気軽に相談ができる環境として、今後はサンハートの児童館への専門職の巡回も検討していきたい。

不登校を経験したご本人や、引きこもりのお子さんを抱えて悩んでいらっしゃるご家族の方のお話を伺うと、「成績は悪くはなかったが、小さい頃は落ち着きがなく、こだわりが強かった」とか、「たまたま書店で発達障害に関する本を読んだら、あまりに自分の子どもの特徴と同じで愕然とした」とおっしゃる方が実に多いことに驚かされる。
また、今まで障がい児を育てるたくさんのお母さんたちと接してきて、親の不安な気持ちは障がいの程度の重い軽いには全く関係ないということを実感している。
従って、私が今回質問してきた、障がいの比較的軽い、いわゆるグレーゾーンの子どもたちに対する支援、ここを今後はていねいに見ていく必要がある。

発達支援センターが、市原市に住む発達障がい児やその家族にとって、強力なサポーターとなるよう、期待している。

(2) 保健センターによる要支援児早期発見の取り組みについて

質問
乳幼児の発達の遅れは、知識や経験を持ったものでなければなかなか気づきにくいものである。特に保護者にとって初めての子育てであればなおさら、わが子の発達の遅れを個人差と受け止めてしまいがちである。
従って、現在保健センターにて行われている一歳半健診や3歳児健診は、発達障がい児の早期スクリーニングとして大変有効な保健サービスであると位置づけられる。
そこで、一歳半健診や3歳児健診について伺う。
健診の際の保健指導によって、心配のある子どもはどのようにフォローされているのか、具体的にお聞かせ願う。

答弁
1歳6か月健診は、平成22年度は対象者2,230人中、2,115人が受診された。うち、要経過観察は667人。このうち81人は心理士による幼児心理相談、40人が幼児教室を利用している。
なお、幼児心理相談や教室終了後に、保健師による継続支援となった幼児が58人、発達支援センターへの照会が19人となっている。
次に、3歳児健診については、平成22年度は対象者2,354人中2,190人受診した。
経過観察は438人であった。
このうち、47人はことばの相談、32人が事後教室(きらきら・いちご教室)、29人が心理相談を利用している。
そのご、発達支援センター紹介が59人、保健師による継続支援が20人、幼稚園・保育所への入所が11人、医療機関への紹介が1人であった。また、心理相談や教室を利用しない幼児については、全て保健師が家庭訪問や電話などで状況を確認し、継続支援をしている。

子どもの発達が気がかりでも、発達支援センターに相談となると二の足を踏むのが親の自然な心理である。一方、保健センターはそれほど抵抗感なく相談できる機関である。
従って、今後もスクリーニングの精度をさらに高め、発達支援センターと連携を取りながら、しっかりと保護者をフォローして頂きたい。

(3) いちはら相談支援ファイル「スクラム」について

質問
これについては、先ほど他会派から質問があったが、私からも加えて質問する。
実際に手にした保護者の話を聞くと、「スクラム」の意義をまだよく理解していない方が多い。
特に、ある程度成長したお子さんの場合、生まれた時からの様子を思い出しながら細かく記入するのはなかなか骨が折れる作業だということもあって、せっかく手に入れても、よほど几帳面な保護者でなければ記入しないという話も聞いている。また、発達支援センターでの配布状況を伺うと、保護者が子どもの障がいを受容していかどうかを見極めてから渡しているとのことであった。しかし、それではなかなか広がっていかないのではないか。
このファイルの記入項目は、幸い障がい児に特化したものではなく、健常児の保護者でも育児記録として気軽に記入できる内容となっている。従って、例えば一つのアイディアとして、先ほど質問にも出した1歳半健診の際に保護者全員に配布し、その場で記入の説明会を開いてはどうか。
一歳半の時点では記入箇所も少なくて済むうえ、このころの保護者は子どもの発達に一番敏感な時期なので、スクラムの記入率は格段にアップすると思われる。
当局のお考えをお聞かせ願う。

答弁
一歳半で配布することにより、「スクラム」の活用がかなり活性化することは間違いない。
提案の全員配布や説明については、今後市原市特別支援教育等連携協議会でさらに研究を進めていきたい。

成長するにつれ、心配のないお子さんの場合は自然と必要がなくなるだけであって、全員に配布することは何も問題はなく、むしろ保護者の子育て意識の向上にも大変有効だと考える。
その後の3歳児健診や就学前健診など、受診率の高い健診時には持参するよう促し、実際に健診の資料としても積極的に活用することで、スクラムの認知度や利用度がさらに高まるのではないか。
さらに、保育、教育、医療、福祉、雇用など、子どもを取り巻くあらゆる関係機関に対しても、例えば「面談の際にはスクラムを持参して下さい」と呼びかけるよう、周知徹底することを要望する。

2. 自転車交通に関する取り組みについて

(1) 自転車対歩行者の交通事故防止対策について

質問1
私の元には、朝の通学時間帯に不意に飛び出してきた高校生の自転車にぶつかって転び、脳内出血を起こして入院されたり、転んで痛めた膝が一年経っても治らないなど、主にお年寄りからの複数の被害の訴えが届いている。被害がないまでも、自転車交通マナーの悪さに、怖くて道を歩くことができないとおっしゃる方は多くいらっしゃる。
私も朝の通学時間帯に確認したが、狭い道路一杯に広がっての併走、二人乗り、ヘッドフォンをしながらなど、特に高校生のマナーの悪さが際立っていた。そこで、現在市では市内の自転車関連の交通事故に対し、どのような認識をもっておられるのか、また、自転車走行の危険防止のために、例えば安全教室など、どのような取り組みをされているのか、状況をお聞かせ願う。

答弁市内の平成21年度の自転車事故は299件、平成22年は304件。うち死者数は平成21年が1名、平成22年が3名。若干増えている。
東日本大震災以降、手軽で便利で、環境にもやさしいと見直された自転車はこれからも利用者が多くなると想定される。
市としては、平成21年7月の道路交通法の改正内容・交通ルール・マナーの周知の啓発・広報を充実させる必要があると認識している。
交通安全教室では、保育所・幼稚園・小学校・高齢者を対象に実施している。
今年度11月末現在、286回17,261人が受講した。
交通安全指導は、幼稚園保護者を対象に3回154人、市内全小学校の2年から6年生のうち学校で指定された学年の小学生に対し50回、3067人に実施した。

質問2
これまで自転車の安全教室は、どちらかと言えば対クルマなど被害者側の視点での啓発が重視されてきた。
しかし、第十次市原市交通安全計画に掲げられている、「道路交通における今後の方向性」の三つの視点のうちの一つ、「歩行者・自転車の事故防止対策」で述べられているように、「自転車は歩行者に対しては加害者である」という観点をしっかりと踏まえて対策を講じる必要がある。その点についてのお考えを改めて問う。

答弁
最近、全国的に自転車が第一当事者となる交通事故が多くなってきたと捉えている。
幼児から段階的な交通教育を関係機関と協力して取り組んでいく。

質問3
H17年第10回大都市交通センサスの統計によると、姉ヶ崎駅への利用交通手段としての徒歩と自転車の割合は57.2%、同様にちはら台駅54.2%、八幡宿駅44.7%にものぼっている。さらに、鎌取駅・誉田駅への利用ニーズも高いと聞いている。
従って、特に朝の通勤通学の時間帯の駅周辺道路は、自転車による対歩行者事故の危険性が高いと思われる。
この時間帯の駅周辺道路での指導啓発は、どの程度なされているのか、ご答弁願う。

答弁
駅周辺の啓発は、広報車によって実施している。
朝の通勤・通学時間帯での啓発については、現在自転車マナーアップキャンペーンとして放置自転車対策をしているが、そのなかで検討していきたい。

一番効果的な時間と場所での指導啓発 それほど頻回に行わずとも効果は高いと思われる。ぜひとりくんで頂きたい。

(2) TSマーク制度の普及啓発について

質問
TSマークとは、自転車安全整備士が点検整備をし、安全な自転車と認めた場合に自転車に貼るステッカーで、一年間の障害保険と賠償責任保険が付随している。
この制度については、H21年6月の定例議会において他会派から質問が出ており、今後普及啓発に努めるとのご答弁であったが、その後の進捗状況は如何か。

答弁
年4回の交通安全運動にあわせて、市の広報誌やHPを活用して普及に努めている。
引き続き普及に努める。

なかなか普及が進まないようであるが、市原市の高齢化率はH23年度で21.5%、5年後には26.7%になると予想されており、特に高齢者対自転車の事故はますます増加すると懸念される。
保険の加入によって、自転車走行の責任意識と同時に安全走行への自覚も増すものと思われる。ぜひ普及が進むように工夫をして頂きたい。

(3) 自転車交通に関する道路施策について

質問1
H20年度に実施した市原市交通マスタープラン市民アンケート調査によると、JR各駅に比較的近い、市原・五井・姉崎の臨海地区や辰巳台・ちはら台地区の住民が、通勤・通学のために徒歩あるいは自転車を利用している割合は、全体の27.9%。買い物のための利用に至っては38.9%と、高い値を示している。
さらに、「交通環境を整えるうえで優先すべき事項は?」との質問に対して、「自転車や歩行者の空間を整備し、鉄道への乗り換え環境の充実を図ってほしい」という要望が全体の16%。これは「鉄道やバスの交通を充実させ、自動車に過度に頼らないまちづくりを目指してほしい」という25%の要望に次ぐ、高い値となっている。
しかし、自転車専用レーン等の路線数は、交通マスタープランの挑戦目標に挙げられてはいるものの、H20年度の基準値にすら数値が挙がっておらず、これからの調査にゆだねるといった状況である。
アンケート調査の結果でも明らかな市民のニーズに対し、自転車交通に関するインフラ整備は非常に遅れているといえるが、自転車も歩行者も安心して快適に通行できるように配慮された道路の整備状況は、どのようになっているのかお聞かせ願う。

答弁
本市では、公安委員会との連携により、平成19年度にあんしん歩行エリア事業として、白金通りの吹き上げ通りから五井消防署間において、車道の停車帯を活用して自転車通行レーンを設けた自転車歩行者道を整備した。
このほか、都市計画道路などの主要道路については、幅員が3メートル以上となる広幅員の歩道整備を進めてきた。

質問2
警察庁交通企画課は10月25日、警察庁交通局長名で「良好な自転車交通秩序の実現のための総合対策の推進について」という通達を全国都道府県警に出した。
この通達は、自転車は車道、歩行者は歩道という明確な区分けのもと、双方の安全を確保するために、今一度、自転車は「車両」であるということを徹底させるということを基本においている。

従って、現在国内全歩道の4割を占めている自転車通行が可能な歩道を、今後は極力減らし、その代わりに自転車専用道路や自転車専用レーンの整備事業の実施を推進することとしている。場合によっては車線を減らすことも視野に入れるなど、クルマよりも自転車の通行環境を優先する姿勢が鮮明に打ち出された通達内容となっている。

この通達により、今後市原市の道路整備事業がどのような影響を受けるのか、見解を伺う。

答弁
今後国土交通省や千葉県から具体的な方向性が示されるものと思われる。
動向を注視しながら対応していく。

質問3
市原市都市計画マスタープランでは、中心市街地や駅周辺などにあらゆる都市機能を集約し、各拠点同士を公共交通ネットワークで有機的に連携するコンパクトシティへの転換を進める上で、徒歩や自転車の利便性を向上することを掲げている。
各拠点においては、近所への買い物や用事を済ませるためのいわゆるママチャリや幼児同乗自転車、そして子どもも安心して走れるような、小回りの利いた比較的低速の自転車走行環境が整備されたまちづくりが求められる。また一方、改訂市原市環境基本計画では、地球温暖化防止に配慮した、クルマに過度に頼らないまちづくりを掲げている。
これに関しては、例えば通勤・通学、あるいはサイクリングなど、各拠点を結ぶ比較的長距離にわたる自転車走行において、車道を一定以上高速で走ることができるような環境でなければ、クルマから自転車への交通手段の転換を図ることは難しいのではないか。千葉県はサイクルツーリズムの推進に本腰を入れ始めており、小湊鉄道のサイクルトレインの活用など、中房総のサイクリング観光の充実を目指している。
高速自転車に対するインフラ整備は、南市原などこれから発展していく観光地においても、必要な施策ではないだろうか。

これら自転車交通施策全般に関する、当局の今後の見通しや見解をお聞かせ願う。

答弁
「自転車を利用しやすい環境整備」、「自転車を利用できる範囲の拡大」、「自転車を利用する意識の向上」今後これらの取り組みを推進することによって、市民の皆さまが自転車を利用しやすい環境を整えていきたい。

高度成長期からこれまでの我が国のクルマ優先の道路行政も、昨今の時代背景により転換期に差し掛かっていたところだが、東日本大震災による交通網のマヒを教訓に、自転車交通はますます見直されている。
そして自転車は、「皮下脂肪」という究極の循環型エネルギーを燃やして走る車両ということで、環境ばかりか健康にも役立ち、医療費の削減にもつながるという、素晴らしい交通手段である。
今一度、歩行者・自転車・クルマの走行空間のバランスを検討し、今後の市原市の道路施策に反映するよう要望する。

3. 児童虐待について

(1) 家庭児童相談室の体制について

質問1
H16年、児童虐待防止法及び児童福祉法の改正が行われ、これまで児童相談所が担ってきた家庭児童相談は、H17年4月より市町村の業務として明確に規定された。
そこで、本市の児童虐待への対応について何点か質問する。
本市の虐待の相談窓口である家庭児童相談室で受理された、児童虐待の相談・通告件数は、制度改正以前からどのように推移しているか、お聞かせ願う。

答弁
制度改正前の平成16年度までは、おおむね70件前後で推移していたが、改正以降、年々増加する傾向にあり、平成19年度114件、20年度180件、21年度181件、22年度154件となっている。

質問2
それでは、次の質問。制度改正以来、市ではどのような体制強化が図られたのか。児童相談所との役割分担は、具体的にどのように変化したのか。

答弁
嘱託職員である家庭児童相談員を平成17年度及び19年度に各1名ずつ増員して4名体制とし、平成18年度からは専任の正職員1名を配置した。
さらに、今年度からは、指揮命令系統を明確化し、より迅速な対応が図られるよう、家庭児童相談室を子ども福祉課の課内室として位置づけ、正職員を専任の室長として体制の強化を図った。
児童相談所との役割分担については、制度改正前は、虐待通告を市が受けた場合、市は中央児童相談所に通告したのちはサポートしていた。改正後は、市が受けた案件は市自らが受理会議を開き、判断・支援を行っている。

質問3
事前にいただいた資料によると、虐待を含む家庭児童相談全体の受付件数のうち、継続のケース、つまり解決に至らないまま抱えている案件が、H20年度63人、H21年度176人、H22年度317人とほぼ倍々で増加の一途をたどっている。これは、どういうことか?

答弁
親の精神的疾患、離婚、経済的不安、DV,子どもが抱える障がいや発達の遅れなどの問題が複合化し、多くの関係機関が長期にわたりかかわる必要性のあるケースが増加していることが原因として挙げられる。

体制を強化してきたとのご答弁だったが、その後も支援終了に至らないケースがここまで倍増しているという実態、これは果たしてこのままでいいのだろうか。
他自治体(市川・八千代・佐倉)では、このように深刻で複雑な案件にも専門的に対応できるように、教員や保育士・保健師・社会福祉士などの資格を持つ正職員を、複数名配置している。
一方、市原市の家庭児童相談員4名は全員年契約の嘱託で週4日勤務。この体制で、相談受理から調査、ケースワーク、家庭訪問、アフターフォローとこなすには無理があるのではないか。
事実、法改正以後も児童相談所で直接請け負っている市原市の事例は相変わらず多く、他自治体には任せられるような事例も、市原市には不安で任せられないというお話も県から伺っている。
これでは、改正児童虐待防止法や改正児童福祉法の目的が全く達成されていないのではないか。人員体制の強化を強く要望する。

(2) 虐待の相談・通告後の対応について

質問
相談・通告を受けた後の流れとしては、厚労省による「市町村児童家庭相談援助指針」にも定められているように、まず受理会議を開催し、当面の方針を決定後、情報の収集や調査をし、ケース検討会議で支援方針を決定、支援に入るとされている。
相談・通告直後の初期判断としての受理会議や、調査後の支援方針を決めるケース検討会議の役割は大変重要であると考えられるが、両会議の開催はどのようにされているのか、状況をお聞かせ願う。

答弁
受理会議では、市が虐待の相談や通告を受けたものについて、主たる担当者・調査及び診断の方法、安全確認の時期や方法、一時保護の要否等について検討している。
緊急な対応を要するものや重篤なケースは児童相談所への送致をしている。
その他のケースでは、ケース検討会議を開催し、支援方針などを決定している。

一歩間違えば子どもの命にも関わる問題である。判断ミスを避けるためには、問題の共有化、一般化を図ることが大事だと考える。つまり、相談を受けたらとにかく組織で判断し、組織でフォローする。会議はそのために開くものである。
それから、的確なケースワークを行うためには、専門的な知識や経験の豊富な職員の配置も必要であると考える。
当局にはさらなる改善を要望する。

(3) 児童虐待を未然に防ぐ取り組みについて

①保健センターの取り組みについて

質問1
警察庁が発表したH22年度上半期の「少年非行等の概要」の統計から被害児童を年齢別に見ると、0歳児の割合が13.4%と最も高いことからも、虐待を未然に防ぐための早期のスクリーニングは非常に大事だということが言える。
そのような観点を踏まえ、妊産婦や0歳児に対する当局の取り組みをお聞かせ願いたい。

答弁
虐待防止の一環として、市内の産婦人科等の医療機関・助産院、市原健康福祉センターで構成する「周産期保健に関する連絡調整会議」を開催し、情報の共有や連絡・連携を密にし、早期にハイリスク妊婦にかかわる支援体制を構築している。
また、平成22年度から、市民課・各支所に加え、保健センターでも母子健康手帳を交付する体制を整えたことで、若年者、未婚者、喫煙妊婦などに保健師が早期に関わり、支援することが可能になった。
更に、妊娠期から新生児訪問事業を周知することや、出生連絡票を全員にへんしんしてもらうことで、新生児訪問の利用率が52.7%と前年度より11.1%増加している。新生児訪問は、産後のうつ病を判断するチェック票を活用し、早期発見に努めている。
また、継続支援の必要な新生児・産婦に対して市の保健師が訪問し、母子の健康管理や育児不安の母親のストレスを軽減する等、虐待の早期発見・防止に努めている。

質問2
「新生児訪問指導」は、母子保健法に基づいて保健師など専門職が母子の健康状態を確認することが主な目的とされる事業だが、一方、児童福祉法に基づいて平成19年に国が創設した事業に、「乳児家庭全戸訪問事業(こんにちは赤ちゃん事業)」がある。
こちらは、児童虐待防止の観点からの、生後4か月までの子育て家庭への訪問支援で、市原市では子育て支援員がボランティアで担っている。
「新生児訪問指導」と「乳児家庭全戸訪問事業」は、どちらも新生児から乳児期にかけての子育て家庭へのアプローチだが、市原市では両事業はどのような連携が図られ、児童虐待防止効果をそれぞれどのように評価されているのか、お聞かせ願う。

答弁
これらの事業については、それぞれの根拠法の規定により個別に実施しており、事業そのものにおける連携は」強くないものの、それぞれの事業から得られた情報を活用しているところである。
事業の評価については、本来目的に加え、児童虐待の未然防止・早期発見の観点からも、母子の健康状態・養育環境などに関する実態把握の機会を多様化し得る有効な方策と考えている。

母子訪問指導員はさておき、子育て支援員の方は年配の方が多く、今時の子育て事情や虐待防止に関する情報が不足していて、せっかくの人材が訪問事業に生かし切れていないというお話も聞いている。特に子育て支援員に対する情報の供給や研修には積極的に取り組まれるよう要望する。
新生児訪問指導を担う母子訪問指導員は、その専門的な立場によって保護者の信用を得やすく、虐待の予防や発見もしやすいというメリットがある。一方、乳児家庭全戸訪問事業を担う子育て支援員は、地域の情報をよく知る身近な子育ての先輩として、保護者が気軽に相談しやすいというメリットがある。
専門職・非専門職それぞれの特徴をもっと生かすために、例えば、新生児訪問指導でなるべく全戸訪問をめざし、子育て支援員はそれをフォローするなど、両事業の連携のあり方を今一度整理して、うまくかみ合うように工夫をして頂きたい。

②養育支援訪問事業について

質問
これは、平成21年4月から児童福祉法上に位置づけられ、市町村に対しその実施に努力義務が課された事業である。
発症率15%と言われる産後うつ病や育児ノイローゼなど、放置していれば児童虐待に発展する恐れがある家庭に対して、保護者の負担を軽減する支援を一定期間行うことによって、その後の安定した養育を可能とするものである。
例えば市川市では、支援が必要と判断された家庭に対し、一日一回3時間を限度に委託事業所のホームヘルパーが訪問し、家事や育児の支援や助言を行っている。家庭内状況の詳細な確認ができ、母親との信頼関係も築きやすいといったメリットも大きく、従来ならば分離が必要な子どもの在宅生活が可能になったという成果を上げていると伺っている。
この効果的な事業を、市原市でも取り入ることについてのお考えを伺う。

答弁
核家族化の進展などにより、家庭の子育て力の低下が懸念されている現状や児童虐待を防止する視点からも、有効な方策であると考えている。
育児や家事援助については、社会福祉協議会に委託しているファミリーサポートセンター事業や社会福祉協議会の自主事業として実施しているホームケアサービスにより、代替的なサービスとして対応を図っている。
現在国で検討されている「子ども・子育て新システム」の導入に伴い、市町村事業計画の策定が予定されており、その前提として養育支援訪問事業を含めたニーズ調査を実施することとなっている・今後ニーズの的確な把握に努めていく。

この事業は、次世代育成支援対策交付金の対象事業で、H22年度の時点で全国の市町村の59.5%(千葉県では51.9%)が取り組んでいる。
我が市としても、「市原の子どもは市原で守り育てる」というスローガンを念頭に、虐待問題に対しては単なる発見・送致にとどまらず、虐待を未然に防ぎ、親の更生につながるような取り組みにも、ぜひ積極的に取り組んで頂くよう、要望する。