平成28年度 第3回市原市議会定例会
個別質問 森山かおる
1.市立幼稚園及び市立保育所再編成計画について
1) 障がい児の受入れ体制について
就学前の教育・保育を一体的に捉え、一貫してより質の高い教育・保育を提供する新たな取り組みを進めるため、市立幼稚園及び市立保育所再編計画がとりまとめられました。
その中の取り組みとして特別支援教育の実施があげられており、具体的なメリットは保育所と同様に特別な配慮が必要な子どもも認定こども園を利用することができるとされています。
幼稚園と保育所を一元化し認定こども園になることで、保育所と同様に、満4才以上で教育を希望する1号認定において特別な配慮が必要な子どもも利用できるようになると謳われていることは喜ばしい限りですが、真のメリットは利用枠の拡大よりも特別支援教育の実施内容ではないかと思います。
これまで市原市では保育所においては障がい児を受け入れてきましたが、幼稚園においては集団生活ができる幼児という募集要項があり、実質的には障がい児を受け入れてきませんでした。この募集要項については小沢議員の指摘によって、ようやく今年度から省かれたという経緯があり、私は特別支援教育の実施について非常に気になっております。
認定こども園における特別支援教育について、どのようにお考えかお聞かせ下さい。
(答弁) 学校教育部長
認定こども園における特別支援教育についてお答えいたします。
特別支援教育は、障がいのある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けて、一人一人の教育的ニーズに応じて適切な指導・支援を行うものであります。
認定こども園においても、特別な支援を必要とする幼児が在籍するすべての園にて、集団の中での生活を通して発達を促し、障がいのある園児が他の園児と共に成長できるよう配慮してまいりたいと考えております。
このため、今後は、認定こども園の開設に向けて、特別支援教育に関する研修会やいちはら相談支援ファイル「スクラム」の活用等を通じて、特別支援教育の充実に向けて関係部局と検討を重ねてまいります。
特別支援教育とは、障がいのある子ども達が自立し社会参加するために、持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善、克服するための指導や支援を行なうものです。
しかし障がいのある子ども達がどれだけ努力しても、受け皿となる社会が変わらなければ社会参加はできないのです。従って特別支援教育は障がい児や特別に配慮が必要な子どもだけのものではなく、共に育つことで他の子ども達が障がいを理解する教育でもあると思います。
特に幼少期の子どもは障がいをもつ友達を「かわいそう」とは見ず、発達の差を柔軟に受け止める力が大人よりも優れています。学校の支援学級のように障がい児を別枠でくくるのではなく、皆の中で共に過ごし育ち合う環境づくりがインクルーシブ教育であり共生社会の第一歩になるのではないでしょうか。
先日YOUホールで大阪の公立小学校の1年間を記録したドキュメンタリー映画「みんなの学校」が上映されました。市長をはじめ教育長、学校教育部長もご覧になられ、市原市の教育に重ね合わせて、いろんな事を感じられたのではないかと思います。
この小学校が目指しているのは不登校ゼロ、特別支援教育の対象となる発達障害がある子も自分の気持ちをうまくコントロールできない子も、支援学級ではなく、皆と同じ教室で学び、誰もが通い続けることができる学校を作り上げています。
映画の中で、障がいのある子だけが頑張るのではなく、障がいのある子を理解する周りの子ども達を育てていくことが特別支援教育だという言葉がありました。どんな子どもにも居場所があり共に学ぶ。
これは公教育のあるべき姿の一つだと思います。
その出発点として幼児期の特別支援教育を考えていただきたい。うまくできないことを周りの子どもも先生と一緒に考えサポートする。障がいのあるなしに関わらず、いろんな友達と触れ合い共に育ち合う環境の中で、互いを認め合う心のバリアフリーが芽生える教育を目指し、それを就学後の学校にも広がることを期待しております。
再編成計画によると「特別支援教育の実施については、現在保育所で実施している障がい児保育と同様に、特別な配慮が必要な子どもへの教育を提供する体制づくりを進めます」とありますが、どのような体制を作っていくのかご見解をお聞かせ下さい。
(答弁)子育て支援部長
認定こども園では、これまで保育所において実施してまいりました「障がい児保育」のノウハウをベースとしながら、「市立幼稚園及び市立保育所再編成計画」により集約できる人材を効果的、効率的に活用し、障害のある子どもと障がいのない子どもが共に学べる仕組みを導入してまいりたいと考えております。
また、「特別支援教育」の具体的な運営上の仕組みに関しては、現在、関係部局と連携をしながら、検討中であり、平成30年の認定こども園の開園に向けて、しっかりと準備をすすめてまいります。
次に加配についてお伺いします。
現在の保育所では、障がい児や配慮が必要な子どもに保育士を加配しています。
発達段階や支援の必要度合いによって、例えば1人の子どもに対し1人の保育士、3人の子ども対して1人の保育士など加配数が決められています。
加配を決めるにあたっては、対象となる子どもの様子について保育所が資料を作成し、その資料に基づいて障害児保育審査会で加配の人数を決めていると伺っています。
この審査会は保育所長と子育て支援部の次長以下で構成された部内会議になっており、発達支援センターを含めて専門知識をもつ人がいません。
ところが小学校や中学校においては、支援が必要な児童生徒につく補助員の配置を判定する教育支援会議の構成員は医師、臨床心理士、市原特別支援学校の代表、千葉県中核地域生活支援センターの代表、学識経験者の5名で、専門知識を持った外部有識者ばかりです。
支援の必要度合いを見極めるためには、障害に精通した専門知識をもつ複数の目が必要だと思います。
再編成計画において加配をどのように選考していくのか。教育支援会議と同様に専門知識をもつ方の判断が必要だと思いますが、ご見解をお伺いします。
(答弁)子育て支援部長
認定こども園における支援を必要とする子どもへの職員加配につきましては、現在、保育所で行っている障がい児保育による加配を基本に、考えているところでございます。
また、障がい児保育審査会の構成メンバーについてでありますが、現在でも必要に応じ審査に必要な専門家や職員の意見を聞くことができるようになっており、これまでも個々の事例によっては、より専門的な観点から助言等をいただきながら審査を進めてまいりました。
こうした実体を踏まえながら、審査会の構成員につきましては、引き続き、より円滑な審査会運営ができるよう、さまざまな視点から検討してまいりたいと考えております。
2) 関係機関との連携強化について
再編成計画の取り組みの推進にあたっては、庁内体制を構築するために「教育・保育施設再編成推進会議」や「教育・保育施設再編成推進検討会」が設置されています。
この検討会の構成委員は企画調整課・総務課・人事課・財政課・保育課・教育総務課・学校教育課の課長と教育センター所長となっています。
ここに発達支援センターが入っていないことを、私はとても不思議に感じます。
認定こども園になることで、今まで以上に特別な配慮が必要な子どもを受け入れていくことになれば、支援の要である発達支援センターとの連携強化が必要ではないでしょうか。
例えば現在進められている小1プロブレムの解消を図るためのアプローチ・カリキュラムやスタート・カリキュラムの研究を進める保育所・幼稚園・小学校合同研修会に、発達支援センターの職員も加わるなど配慮が必要な子どもへの視点を、取り組みや研究の当初から入れていただきたいと思います。
そこで「教育・保育施設再編成推進検討会」の委員に発達支援センターの所長を加えて、療育・保育・教育の連携を図っていただきたいと思うのですが、ご見解をお伺いします。
(答弁)子育て支援部長
現在、設置されております「教育・保育施設再編成推進会議」や「教育・保育施設再編成推進検討会」につきましては、再編成計画の全体像を主に審議していることから、発達支援センターの所長は構成委員として参加してはおりませんが、推進会議、検討会とも必要に応じ、関係機関の職員も参加できることとしております。
一方で、今後の認定こども園における、特別支援教育をはじめ、より具体的な教育の充実について検討をする機関といたしましては、本年4月に、教育委員会において幼稚園の園長、保育所の所長、教育総務課、指導課、保育課、発達支援センター、教育センターなどの職員を構成員とする「市立幼稚園及び市立保育所再編成計画の教育課程及び連携カリキュラム・研修計画作成に係るプロジェクト会議」を設置しており、その委員として発達支援センターも参加しておりますことから、その中の議論により、一層、療育・保育・教育の連携の強化が図られていくものと考えております。
障がい児を含め特別な配慮が必要な子どもにとっては、支援のあり方次第で発達が大きく左右されます。
適切な支援が受けられず2次障害につながるケースもあり、幼児教育は早期療育の一部であるといえます。発達支援センターと教育センターの連携を強化して、今までは途切れていた就学前と就学後の支援を切れ目なく行えるようにしていただきたいと思います。
この再編成計画の目的は、全ての子どもに質の高い教育・保育の提供を目指すものであり、そのためには子育て支援部と教育委員会が情報を共有して、市立認定こども園がより良いものとなるように計画を進めていただきたいと思います。
2.学校給食におけるアレルギー対応について
平成25年に文部科学省の委託事業により、全国の公立小学校・中学校・中等教育学校・高等学校を対象にした「学校生活における健康管理に関する調査」が行われました。
その中で食物アレルギーがある子どもは小学校で210,461人(4.5%)、中学校・中等教育学校で114,404人(4.8%)となっており、平成19年の調査に比べると小学校で1.7%、中学校・中等教育学校で2.2%増えています。
市原市においてはH27年度で、小学校で650人(4.7%)、中学校で350人(4.8%)の食物アレルギーがある児童生徒がいると伺っています。この1000人のなかで食事制限が必要な児童生徒の数は828人。
そのうち、約9割の732人はできあがった給食からアレルギー原因の食材を取り除いて食することができると伺っていますが、残る1割の児童生徒のうち74人はアレルギー原因の食材を取り除くだけでは食することができず、食べられない献立がある時は代わりのものを家庭から持参しており、22人においては給食をやめて毎日お弁当を持参していると伺っております。
私は以前住んでいた土地でアレルギーをもつ子どもの親から負担の大きさを聞きました。毎月献立を先生とチェックして、食べられない献立があれば代わりのものを子どもに持たせなければいけません。例え熱が出てもどれだけしんどくても作らなければいけない。
それでも献立を見て、できる限り似たようなものを作って持たせようとしているのは、皆と同じものを食べたいと願っている我が子への想いからです。
現在の給食共同調理場ではアレルギーに対応できる設備がありませんので、全ての児童生徒に合わせた給食を提供することが難しい状況であることは理解しておりますが、代わりのものを家庭から持参することを少なくし、一人でも多くの児童生徒に給食を提供できるようにするために、どのように取り組んでこられたのか、お伺いします。
(答弁)教育総務部長
議員ご指摘のとおり、本市の学校給食共同調理場には食物アレルギー対応食の設備がございません。
このような中で、学校では、毎年、各家庭から提出される学校生活管理指導表や保健調査票により、児童・生徒のアレルギーの有無や症状を把握しております。
これらの情報は学校を通じて調理場に伝えられ、栄養士が対象児童・生徒ごとに給食の献立の中でアレルギーの原因となる食品の一覧表を作成し、各家庭へ提供しております。
さらに、献立に係る詳細な資料が必要な家庭には、保護者の申し出に応じて、食材に含まれる原材料のわかる成分表などの資料を提供し、食べられるかどうかを判断してもらうことで、より多くの児童・生徒に給食を提供できるように努めております。
また、学校においては、毎月、給食の献立の内容を確認し、給食の開始前にアレルギー原因物質を含んでいる献立のメニューと材料を対象の児童・生徒に個別に伝えるなど、事故防止に努める取り組みを実施しております。
今年度の4月~7月の献立を見ると、食品衛生法の表示が義務づけられている主なアレルゲン 7品目のうち乳製品・卵が含まれない日は、牛乳を除いたとしても一か月に2日ほどしかありません。
近隣の袖ケ浦市や木更津市と比較してみても、乳製品と卵の多さが際立っています。
昨年度の学校給食運営目標によると、魅力ある給食づくりの推進として、年中行事にちなんだ行事食を取り入れて創意工夫した献立づくりを行い給食への関心をより高めるとされていますが、入学・進級お祝い献立は、乳製品・卵が全ての献立に入っています。
また、成分分析表による安全性の確認及びアレルギー原因物質の把握の徹底を図るとされていますが、いかにアレルギー原因物質が多いかを把握したのであれば、次のステップとして、できるだけアレルギー原 因物質を使わない献立の改善につなげられないものでしょうか。
ある自治体ではアレルギー物質を含む食品として卵・乳製品(牛乳・チーズ・バター・ヨーグルト・脱脂粉乳)・イカ・エビ・カニを可能なかぎり使用しない献立づくりを行っています。
ここに主要アレルゲンである小麦粉が入っていないのは、全校でアンケートをとり小麦粉アレルギーの児童生徒が非常に少なかったからと聞いております。それでもカレーやハヤシライスには小麦粉を米粉に代え、調味料として使用していた脱脂粉乳・粉チーズ・バターを入れずに味を低下させることがない調理の工夫をしています。
調味料・練製品・冷凍食品などもできる限りアレルギー原因の入っていないものを使い、アレルギーをもつ子ども達にも友達と一緒に給食を食べる楽しさを味わってほしいと、多くの子が同じものを食べられるようにしています。
このような努力があって1か月に2~3日だけ、しかも1品のみにアレルギー原因である卵・乳製品・いか・えび・かにが含まれているだけです。
その上に給食センターでは献立に入っている原因食品を取り除いて調理していますし、クリスマスケーキなどのデザートはゼリーなどに替えて提供しています。
それでいて一食あたりの給食費は小学生で約265円、中学生で280円。市原市は小学生257円、中学生303円ですから、予算をかけなくてもアレルギーに考慮した献立はできるのではないでしょうか。
可能な限りアレルギー原因のない調味料や食材を使用して献立を考えていただきたいと思うのですが、ご見解をお伺いします。
(答弁)教育総務部長
学校給食の献立については、児童・生徒の学校給食摂取基準を満たし、かつ、食物アレルギーに配慮し、栄養バランスのとれた魅力ある献立作りを心がけております。
また、使用する食材については、できるだけアレルギー原因物質を含まないもの、遺伝子組み換え食品を使用しないものなど、安全で安心な給食の提供を最優先として、毎月の使用物資を選定しております。
しかしながら、給食で使用するコンソメやカレールー・揚げ物などには、乳糖・カゼインナトリウムなどの「乳たんぱく」が、ハム・ベーコン・焼き豚などの肉加工食品については、つなぎとして「卵たんぱく」が含まれており、乳や卵の除去が困難な状況です。
一方、食材メーカーにおいては、食物アレルギー対応が給食を提供する際の課題でもあるため、食物アレルギー対応商品の開発や、専用工場で商品を製造する業者も増えてきております。
今後も、できるだけ、そうしたアレルギー原因物質を除去した食品等の使用に努めてまいります。
献立の見直しだけでなく配膳の工夫も必要です。
例えば卵を別にして調理し配膳の時に混ぜるようにすれば、先に取り分けて食することができます。アレルギー原因の食材を分けて調理するなどの工夫を重ねて、一人でも多くの児童生徒が給食を食べられるように対応していくことは、今できる最大限の努力として行っていただきたくようお願いします。
また献立に入っている原因食品を取り除いて調理する「除去食」や、献立を変えて調理する「代替食」を提供する自治体が年々増えてきており、市原市も取り組んでいただきたいと思います。
そのためには調理段階で原因食品が混入しないように、調理場内の部屋を区切るなど専用のスペースが必要になります。袖ケ浦市・木更津市・鎌ヶ谷市・柏市では、アレルギー食調理室を設け除去食を提供していますし、君津市は調理場の建替えにより2年後にアレルギー対応が可能になる予定です。
そこで給食共同調理場についてお伺いします。第一調理場は建築されてから45年、第二調理場は40年が経過しています。今後公共資産マネジメントが進められていく中で児童生徒数だけでなく、一人でも多くの児童生徒が食べられるよう考慮していただきたいと思っていますが、ご見解をお伺いします。
(答弁)学校教育部長
食物アレルギーのある児童・生徒が安全な給食を安心して食べられるために、共同調理場の調理環境を整えていくことは、重要な課題と認識しております。
今後、新総合計画策定の過程で共同調理場のあり方を検討する中で、食物アレルギーのある児童・生徒への対応についても、あわせて検討してまいります。
近隣の袖ケ浦市と木更津市は、アレルギー食調理室を設け除去食を提供しているにもかかわらず、元々の献立に入っているアレルゲンが市原市よりも格段に少ないです。
調理場の建替えや改修には年月がかかることですので、それまでの取り組みとして、献立内容や配膳の工夫などできる限りの工夫をしていただくよう要望します。
献立によっては食べられないものが提供されても給食費は他の児童生徒と同じ金額を払い、しかも代替食を作らなければならないという二重の負担があることを忘れないで下さい。